
臨床試験がますます複雑化する中で、バイオ医薬品企業は、コスト削減、試験管理の簡素化、そして最新の試験情報の維持を目的として、臨床試験テクノロジーのソリューションに注目しています。テクノロジーは進化を遂げており、試験の立ち上げスピード、実施方法、患者への治療薬提供の迅速化を支援することで、安全性および有効性データを可能な限り早く収集できるようになっています。
臨床試験の実施において非常に重要な臨床試験テクノロジーソリューションのひとつが、ランダム化および治験薬供給管理(RTSM:Randomization and Trial Supply Management)と呼ばれる包括的な領域に含まれます。RTSMは、IRT(Interactive Response Technology/インタラクティブ応答技術)とも呼ばれています。この技術の原型は数十年前に開発されましたが、メディデータは、試験デザインの複雑化に対応できるよう、継続的なイノベーションと技術進化を牽引してきました。その結果、現在では、複数の大陸にまたがり、数万人規模の患者を中央で管理するような、大規模で複雑かつブラインド化されたグローバル試験の実行がより現実的なものとなっています。過去11年間で、Rave RTSMは3,000件以上の臨床試験に採用されてきました。規模の大小を問わず、あらゆるレベルの複雑性に対応しています。とはいえ、RTSMの価値はテクノロジーそのものにとどまりません。この領域に関する深い知識と専門性を備えたサービスチームが、プロトコル遵守の確保とリスク軽減を強力にサポートします。
臨床試験におけるRTSM
RTSMシステムは、患者のランダム化を効率的かつ正確に管理し、治験薬(IP:Investigational Product)の供給および再供給をデポ(倉庫)や医療機関、さらには患者の自宅まで自動化するほか、投与量の管理や薬剤の払出しも担います。このような供給およびロジスティクス管理の自動化により、より広範で多様な患者層を世界中から対象とする臨床試験の実施が可能になりました。最新のRTSMシステムは短期間で立ち上げ可能であり、必要に応じて迅速な変更にも対応できます。この自動化によって、試験期間を数週間短縮することができ、コスト削減につながるだけでなく、新たな治療法をより早く市場に届けることを可能にします。
現在の複雑な臨床試験においては、RTSMシステムには単なるランダム化、ブラインド解除、供給管理といった基本機能にとどまらず、さらに高度な機能が求められています。これには以下のような機能が含まれます:
- 多様なランダム化方式への対応、および再ランダム化のサポート
- 内蔵のランダム化リスト生成機能
- 最先端のビジュアル分析レポート機能
- 供給予測機能
- 配送アルゴリズムの検証・解析機能(フォレンジック)
- 複数の層別・バランス要因(例:性別、年齢層、疾患の重症度)に基づいた、事前に指定された比率での治療割り当て
- 逐次および並列コホート両方に対応したコホート登録および管理機能、ならびに患者の代替登録対応
- 複雑な投与スケジュールの正確な計算機能
- 治験薬供給のトレーサビリティ(Supply Accountability)
- デポからの直接配送または施設在庫からの払出しを選択できる柔軟性を備えた患者宅への直接配送(DTP:Direct-to-Patient Shipping)
- 治験薬在庫切れを防ぐための、自動かつ設定可能な再供給機能
- リアルタイムでのリクルートメント状況、供給状況、予測のモニタリング、および再供給パラメータの設定
- ユーザーのブラインド状態に応じて、治験データ(過去の供給・出荷状況、投与内容、患者ステータスなど)を抽出可能なエクスポート機能
患者のランダム化
臨床試験におけるランダム化は、予測可能性を排除し、バイアスを防ぐために、患者を治療群に無作為に割り当てることを保証します。ランダム化の基本的な目的は、介入群と対照群の比較可能性を確保し、結果や転帰の違いを治療によるものとして説明できるようにすることで、統計的な検出力(statistical power)を担保することです。このプロセスを正確かつ効率的に実施することが極めて重要である一方で、患者を治療群に割り当てることは、RTSMが臨床試験で果たす機能の一部に過ぎないという点を理解しておくことも重要です。
治験薬供給管理
治験薬供給管理におけるRTSMの目的は、以下の3点に集約されます:
1)適切な製品を適切なタイミングで十分な数量、治験施設に確保すること
2)無駄を最小限に抑えること
3)単純かつ論理的な作業をコンピュータ処理によって自動化し、業務効率を向上させること
これらを実現する一方で、治療のブラインド(盲検)を維持しつつ、患者の安全性も確保するという重要な要素も担っています。
数十年前の臨床研究では、治験薬キットに患者のランダム化IDが記載されており、試験期間中に必要なすべての治験薬があらかじめ含まれていることが一般的でした。しかし、その患者が登録されなかった場合や早期に試験を中止した場合、大量の治験薬が無駄になる可能性がありました。初期のRTSMソリューションは、こうした無駄を削減するのに貢献しました。具体的には、直近で必要とされる分だけを施設に配置し、患者の治療群や来院スケジュールに基づいて、追加の治験薬(IP)を自動的に手配する仕組みが導入されました。その結果、ブラインド化された、個別識別された在庫を患者ごとに事前に割り当てておく必要がなくなり、RTSMが訪問ごとにどのキットを払い出すかを試験コーディネーターや薬剤師に指示できるようになったのです。
最新のRTSMでは、試験に関する専門知識と理解を持つエンドユーザーが、施設の特性や在庫の種類に応じて複数の供給プランを柔軟に設定できるようになっています。また、リスクのある状況(例:デポの在庫不足、一定期間内に届かない出荷、近づく有効期限)に対してアラートを設定したり、施設や試験全体における将来の在庫ニーズを予測・出力することで、製造やラベル作成のスケジューリングを最適化することも可能です。さらに、複数の試験に共通する供給品は、デポや施設レベルで在庫をプール(共有)することにより、柔軟な在庫管理を実現できます。RTSMとサードパーティの在庫管理システムとの直接データ連携によって、人的作業が削減され、業務効率とデータ品質の向上も図られています。
こうした高機能なツールの普及が進む中で、最新のRTSMを活用して、シリアル番号付き(番号管理された)在庫だけでなく、番号のない治験薬や補助的な資材(アンシラリーサプライ)を含むバルク在庫まで管理することが、今では一般的になりつつあります。さらに、供給品のトレーサビリティ(供給実績管理)、返品、廃棄までをサポートする機能も備わっており、RTSMは臨床試験用資材のライフサイクル全体を一元的に管理・監視できるソリューションへと進化しています。
ブラインドの保護と患者の安全性の確保
ブラインド(盲検)の維持は、治療内容を知ることによって生じる評価バイアスを防ぐために重要です。
RTSMの自動ブラインド解除機能(コードブレイク機能)は、封筒によるコードブレイクや24時間対応の電話窓口など、制御レベルの低い従来の手法に比べて、より高いセキュリティと優れた監査証跡を提供します。システムには、治験責任医師、指定された試験責任者、またはグローバルの安全性部門の担当者が、患者のブラインドを解除し、投与内容の正確性を確認できるように設定されています。このような安全で堅牢な仕組みにより、必要なときに患者の治療情報へアクセスできる一方で、患者の安全性を確保しながら、試験の完全性も維持することが可能となります。
RTSM構築と運用における専門知識
試験の複雑性と潜在的なリスクに対応しながらRTSMを構築・運用するにあたっては、RTSM分野における豊富な業界経験を持つチームが関与することが極めて重要です。そのような専門チームの存在により、高度な機能の効果的な活用や、臨床試験を成功に導くために必要なサービス提供の最適化が可能になります。たとえば、現在の複雑なランダム化設計では、複数の層別要因の組み合わせが必要とされる一方で、登録される患者数は限られていることがあります。また、多数のキットタイプや投与レジメンが存在し、グローバルに分散した施設で実施される試験では、効率的な試験運営が大きな課題となります。場合によっては、登録や物流の管理がほぼ不可能となり、試験チームや実施施設に過大な負担をかけてしまうこともあります。このような中で、複雑かつ多様でグローバルな臨床試験の経験を持つ専門家を関与させることで、試験チームは効果的な戦略の立案、迅速な意思決定、そして成果の最適化を図ることができます。
まとめ
RTSMは、臨床試験の管理において非常に価値の高いツールです。臨床試験におけるランダム化は、治療群のバランスを保ち、選択バイアスを排除する役割を果たします。また、治験薬供給管理は、適切な治験薬や資材を、スケジュール通りに確実に患者へ届けることを保証します。試験の完全性を守り、患者の安全性を確保するためには、経験豊富なチームと包括的なテクノロジーの活用が不可欠です。こうした要素すべてを一貫した形で正しく運用することにより、期待される成果を達成し、望ましい結果を導くことが可能になります。
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