メディデータのデータベースを利用した研究で、乳がんおよび前立腺がんの患者がビタミンD不足に陥るとCOVID-19感染症のリスクが高まる可能性を示唆
パンデミックの初期のころ、すでに一部の研究者はビタミンDの欠乏とCOVID-19への感染との関連性について推測をしていましたが、このようなリスクのある集団における潜在的な関連性を理解しようとする動きがきっかけとなって、2021年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会でその研究内容が発表されました。ビタミンD欠乏症の発見は難しくなく、すぐに改善できるものなので、仮にビタミンDがCOVID-19の動態に役割を果たしているのであれば、その関係を深く探ることは非常に理にかなっているといえます。
結果的に、今回の研究で乳がんや前立腺がんの患者がビタミンD不足になると、COVID-19感染のリスクが高まる可能性があることが示唆されました。この結論は先の発見を裏付けるもので、さらなる臨床研究が依然として推奨されていますが、私たちの研究は、がん患者全体およびがん患者におけるビタミンDレベルを監視することの重要性を強調しています。
研究者らは、メディデータが提供するCOVID-19 Research Databaseと呼ばれる革新的なデータ環境を利用して、この研究を実施することができました。データソフトウェアベンダーとデータプロバイダーからなるこのコンソーシアムは、無償でそのリソースをプールし、検証可能な仮説を立てているすべての人が利用できるようにしたもので、これまでにない規模のデータセットを横断的にリンクさせるという、ユニークな環境とユニークな研究体験を提供しています。
この研究は、パブリックヘルスに大きな影響を与える可能性を秘めています。そもそもがん患者にとってビタミンDの検査はそれほど頻繁に行われていません。今回の研究でビタミンDの欠如が感染リスクを高める要因であることがわかってきたことで、今後さまざまながん患者にとってより必要とされるサポートケアの実施が検討されていく可能性があります。
技術的な観点から言えば、250人以上の研究者をサポートしながら、このような研究を行い、環境を整え、管理し、規模を拡大する能力を同時に示すことは大変なことであり、偉業を成し遂げたともいえるでしょう。私たちは、今回の緊急事態に対応できるのであれば次の緊急事態にも対応できるはずだと考えています。
COVID-19 DatabaseはCOVID-19があったからこそ生まれたものであり、私たちの研究は、パンデミックの中でもいかに早くデータを収集し、有用な知見を得ることができるかを示す一例です。コンソーシアムが設立されたのは昨年の夏ですが、パンデミックが始まったのは1年以上前であることを考えてみてください。私たちはデータが生成されると同時に評価を行なっています。これは非常に素晴らしいことであり、COVID-19の「長距離輸送車」*の人々の場合はデータは蓄積され続けます。時間とともに質問の内容が変化するにつれて環境が適応してくため、新しいものはなにも必要ありません。研究は今も続いています。
この場を借りて、著者の皆様に感謝申し上げます。
Aaron Galaznik (MD MBA), Emelly Rusli (MPH), Vicki Wing (MS), Rahul Jain (PhD), Sheila Diamond(MS CGC), and David Fajgenbaum(MD MBA MSc FCPP).
また、COVID-19 Research Databaseチーム、特にデータベースのエンジニアリングに貢献したメディデータのプロダクトエンジニアリング担当ディレクターDavid GrahamとリードソフトウェアエンジニアLev Zarakovich、そして誰一人欠けても今回の研究はなしえなかったコンソーシアムの全てのパートナーの皆様に感謝いたします。
*COVID-19に感染し、その後何ヶ月にもわたって不調が続く人々が自らのことを表現したもの。「長距離輸送車(long haulers)」「長期コロナ感染症(long COVID)」などと名付けたりしている。
この記事は2021年6月10日にGeeks Talk Clinicalでの英文投稿の抄訳となります。原文はこちらをご参照ください。