
腫瘍学の臨床試験において、正確で信頼性の高い画像診断は、治療効果の評価や疾患の進行を判断する上で極めて重要です。特に、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、体の詳細な断面画像を提供できるため、広く使用されています。しかし、CT画像の価値は、その品質によって決まります。画像の品質を確保することは、一貫性を維持し、ばらつきを減らし、試験結果の信頼性を保証するために不可欠です。
医用画像における品質管理の重要性
臨床試験では、複数の研究施設が関与することが多く、それぞれが異なる画像診断装置、標準的なケアのプロトコル、担当者を持っています。 このばらつきは画像の品質に一貫性のない状態を生み出し、正確で比較可能な評価を行う能力に影響を与える可能性があります。品質管理(QC)プロセスは、画像取得プロトコルを標準化し、試験施設間での一貫性を確保するために重要です。
固形がんの治療効果評価基準(RECIST) は、腫瘍サイズの変化を測定するために一般的に使用されています。しかし、画像品質の違いは腫瘍の評価に影響を及ぼし、それが試験の評価項目(エンドポイント)、コスト、スケジュールに影響を与える可能性があります。具体的な例として、以下のようなケースが挙げられます:
- 造影剤の有無および種類
- 解剖学的な撮像範囲
- アーチファクト(画像の乱れ)の有無
- 適切な視野
- ベースライン画像とフォローアップ画像が同一の患者のものであるかどうか
強固な品質管理(QC)プロセスは、腫瘍評価の正確性と再現性を確保する上で不可欠であり、治療効果を適切に判断するために極めて重要です。QCプロセスが不十分な場合、データの整合性や再現性について規制当局から疑問を持たれる可能性があり、最終的には規制承認に影響を及ぼす可能性があります。そのため、徹底したQCプロセスを導入することで、これらのリスクを軽減することができます。また、技術の活用は、これらのQCの課題を解決する上で重要な役割を果たします。
課題
複数の施設から収集される大量の画像データを管理・レビューする作業は、手作業が多く、時間がかかり、コストも高額になります。コスト削減のため、画像の品質管理(QC)は通常、放射線科医ではなく、画像技師や訓練を受けた画像専門家が担当することが一般的です。 しかし、これによりQC結果にばらつきが生じる可能性があります。
技術による解決策
AIアルゴリズムは、自動的に解剖学的なカバレッジ(撮影範囲)を評価し、ベースライン画像とフォローアップ画像が同じ患者のものであるかを判定し、その結果をエンドユーザーに提示することができます。さらに、これらのアルゴリズムは軸状画像(アキシャルイメージ)が含まれているか、画像の欠損がないかといったチェックも実行できます。これにより、試験に提供されたすべての画像を開いて確認する手間を省き、時間とコストを削減しながら、ばらつきを抑えた高品質な結果を得ることができます。また、結果はユーザーが確認・修正できる形で提示されるため、必要に応じて調整が可能です。
このアルゴリズムは、ダッソー・システムズのBIOVIAグループによって開発され、最先端のデータパイプラインソリューションであるPipeline Pilotを活用しています。そして、メディデータはこれらのアルゴリズムをRave Imagingに統合しました。このコラボレーションは、メディデータのライフサイエンス分野での専門知識と、ダッソー・システムズのチームや製品の強みを組み合わせることで生まれた成果です。現在、これらの2つのアルゴリズムが導入されていますが、今後さらに追加され、最終的にはすべての腫瘍画像の品質チェックが自動化され、Rave Imagingに統合される予定です。例えば、静脈内造影剤の使用有無の判定や適切な視野(フィールド・オブ・ビュー)の確保などが含まれます。
結論
CT画像の強固な品質管理は、腫瘍学の臨床試験において不可欠な要素です。強固なQCプログラムを導入することで、画像データの正確性と信頼性を確保し、規制当局への申請要件を満たすことが可能となり、腫瘍学試験の成功を支えます。人工知能(AI)の進化と、臨床試験プロセスの改善に向けたその可能性の拡大により、かつてのように、すべての画像を個別に開いて手作業で品質チェックを行う必要はなくなりました。これにより、コスト削減、試験期間の短縮、試験結果全体の品質向上が実現します。
Contact Us
