分散型臨床試験(DCT)の採用は、テクノロジーの導入以上の意味を持つ:5つの潜在的な落とし穴

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2021-08-25
分散型臨床試験(DCT)の採用は、テクノロジーの導入以上の意味を持つ:5つの潜在的な落とし穴

DCTの採用は、テクノロジーの導入以上の意味を持つ:5つの潜在的な落とし穴

分散型臨床試験(DCT)の利点については誰もが耳にしたことがあると思います。一般的には、DCTの採用により、患者募集や登録が迅速に行われ、被験者の多様性が向上し、選択肢が増えることで参加の負担が軽減される、などが挙げられます。また、従来の臨床データ、ウェアラブルセンサーからのデータ、患者からの報告結果など、さまざまなデータソースを活用できるため、そこから得られた結果の関連性が高まり、アウトカムをより一般化することができます。さらに、これまでよりも合理的なワークフローが実現できることにより、現場の負担が軽減されます。

このような理由から、DCTは、COVID-19パンデミックによって2020年に世界のあらゆる流れが停止する以前から、医薬品開発を加速し、患者体験を向上させる方法として多くのライフサイエンス企業で活用されてきました。世界的なパンデミックのために患者が治験施設に赴けなかったことが、DCTの採用と普及を急がせ、現在では主流ともなってきています。しかし、適切な採用、導入、実装がなされなければ、患者体験の向上は保証されません。

分散型臨床試験の導入を検討する際には、テクノロジーの設計と導入に焦点が当てられています。もちろんそれは非常に重要なことではありますが、DCTを成功させ治験施設や患者体験を向上させるためには、他にもいくつかの重要な考慮事項があります。

 

1. 分散型臨床試験のスタディ/プロトコルデザインに対する全体的なシステムアプローチ。「少ない方が良い」理由

DCTは「1つのデザインですべてに対応できる」わけではありません。疾患領域、治療法の種類、患者層、場所などがすべてデザインに影響します。臨床試験とバーチャル試験(またはその組み合わせ)、試験に特化したラボと通常の臨床ケア、電子カルテの導入、組み込み型デザインなど、多くのデザインオプションを選択することができます。

メディデータのアドバイザリーサービス担当ディレクター Holly Robertsonは、次のように述べています。「何でも試してみたいという誘惑に駆られますが、まずは本当に必要なものは何か、なぜそれを設計に含めるのか、それによって何が得られるのかを評価することに集中する必要があります。重要なのは、一生懸命働くのではなく、賢く働くことです。」

試験の目的を達成するために必要な戦略を評価して合理化し、潜在的な問題を回避することが重要です。テクノロジーに合わせてデザインを選ぶのではなく、デザインをサポートするテクノロジーを選ぶべきです。また、試験構成要素の開発が分断されていると、Robertsonがいうような「フランケンシュタイン」のようなまとまりのない試験になってしまうので、エンドツーエンドのソリューションを検討するのは良いアイデアとも言えるでしょう。

 

2. DCTにおける患者体験 

患者体験は、それがDCTであっても、従来型の臨床試験であっても、はたまたハイブリッド型臨床試験であっても、あらゆる臨床試験の成功において不可欠です。試験デザインや試験を問題なく完了させるための戦略の一環として、患者パートナーグループを含めることが重要になります。試験に関する説明文書は、患者フレンドリーかつわかりやすく、より魅力的と思えるもの、かつ、さまざまな患者集団に合わせたものでなければなりません。患者の参加を効率化するために患者ポータルを使用するなど、試験全体を通して患者中心のアプローチを維持する必要があります。

患者に参加方法の選択肢を提供することで、試験への参加と継続のハードルを下げることができます。ある程度の柔軟性があれば、患者の試験参加継続をサポートすることができますが、柔軟性が高すぎるとかえって混乱を招き、試験のモニタリングや品質に支障をきたす可能性があるため、適切なバランスをとることが重要です。

Robertsonは次のように述べています。「患者が必要条件を守り、継続する動機となるようなエンゲージメント戦略が重要です。患者のためのコミュニティ作り、アラートや通知、ニュースレターなどを通じて臨床試験の最新情報を提供し、リマインダーや予定されたタッチポイントを提供することで、患者エンゲージメントを維持しながら定着を図ることが含まれた戦略が求められます。」

 

3. 規制対応

患者の安全とデータのプライバシーを維持しながら新しい技術を採用するために、それに対する規制も急速に変化しています。国や規制当局によっては、他の国よりも準備が整っている場合がありますので常にアンテナを張っておくことも重要です。この流れに乗り遅れないようにするためには、戦略や技術などについて明確なメッセージを伝え、早い段階で頻繁に話し合いを行うことが重要となります。

 

4. サイトの役割と責任:チェンジマネジメントを支える戦略

DCTへの準備ができているのは、治験施設よりも患者の方かもしれません。そのため、施設における新たな戦略や技術の採用をサポートするために、治験施設の関わり方とトレーニングに投資することが重要です。試験実施施設は、仮想化やリーン試験の報酬モデルにより、オーバーサイトを十分に行えるかどうかに懸念を抱く可能性があることを十分に理解する必要があります。このような理由から、治験施設の代表者に試験デザインや運営のパートナーとして参加してもらう必要があります。

Robertsonは次のように述べています。「施設は新しいエンゲージメントモデルを採用することに躊躇するかもしれません。採用率を最大化するためには、試験担当者への教育とトレーニングが重要です。」これには、迅速に患者を特定するためにどのような方法を用いるのか、大勢の患者募集や登録を行うためにはどうするか、などが含まれます。さらに、DCTでは治験責任医師(PI)やサイトの定義が異なる場合があります。例えば、一人のPIではなく、診療科や医療システム全体が関与する可能性があるため、幅広い臨床医療チームの関与と支援が不可欠です。

DCTでは臨床試験のための個人的な訪問を減らしたりなくしたりすることができますが、患者はたとえ会う機会が減ったとしても、臨床医との親密な関係を維持したいと望んでいる場合もよくあります。「臨床医が自分のことを気にかけてくれていると感じられるかどうかは患者にとって重要であり、彼らはしっかりと臨床試験への参加をサポートしてくれることを望んでいます」とRobertsonはアドバイスします。DCTの場合、ビデオ会議を利用することでこのような関係を築くことができます。

 

5. 「データ」ソースの検討

様々なデータソースの品質、完全性、適時性を理解し、それが臨床試験中のモニタリングに与える影響を把握することが重要です。DCTでは、ウェアラブル/センサー、電子的な患者報告アウトカム(ePRO)、電子カルテ(EHR)など、複数のデータソースを使用することがよくあります。特に臨床試験の実施中に重要なインサイトを得るために使用する場合、データの統合は複雑になります。

Robertsonは言います。「個々のデータソースの限界、質、価値を考慮して、適切なデータの組み合わせを行うことが非常に重要です。さまざまなデータを取り入れることの価値は、臨床試験に参加している患者の全体像を明らかにすることです。リアルワールドデータを取り入れることで、患者の健康状態をよりよく表すことができます。」バーチャルビジットによるデータ収集は、アドヒアランスと安全性のモニタリングにも焦点を当てる必要があります。

複数のデータソースに基づいてデータ戦略を設計する際には、各データソースの特性を念頭に置き、データソースの連携が患者の洞察力や安全性モニタリングにどのように影響するかを考慮することが重要です。複数のデータソースを組み込んだデータ戦略をとることで、患者を最も完全に把握することができ、それが常により良い結果をもたらすことになるのです。

 

まとめ

DCTは臨床研究の進歩を象徴するものであり、臨床試験へのアクセスを向上させ、患者の募集、維持、多様性の改善を実現する可能性を秘めていますが、導入にあたっての進め方が鍵となります。適切なテクノロジーパートナーを選択し、十分に考え抜かれた戦略を実行することで、ライフサイエンス企業はDCTの可能性を最大限に活用し、最終的には新薬、ワクチン、デバイスをより早く市場に投入することができるようになるでしょう。

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